インコが逃げた!
インコが逃げた話を書き残しておく
母親の声で目が覚める
大学が始まる前なので、朝は8時とか9時くらいにのんびり起きていた 7 月。
でも 29 日は母親の声で目が覚めた。 うっすら聞こえてくる掃除機からの音とインコの呼び鳴きの声、ドアを開ける音。そして、母親の「あっ」という声。
母親のもとに行くと、いきなり「逃げちゃった」と。ドアを開けた瞬間に「あっ」と言っていたのでもう何となく予想はついていたけど、何が逃げたのと聞く。「ぴーちゃん逃げちゃった」と。
え、どこに飛んでいったの?と聞いても、分からないという。掃除中に段ボールがあるのに気づいて外に捨てに行こうとしたら、インコが飛んでいってしまったらしい。
走る
母親に方角くらいはわかるかどうか聞くと、南であると指さすので、その方向に走る。まだ生まれて数ヶ月の若鳥だ。飛ぶ能力は低いし、きっとどこかにいるだろうと楽観的に考え、スマホからインコの鳴き声動画を最大音量で再生する。近所迷惑かな。でもどんどん離れているかもしれないし、早く見つけなきゃ。
そう言って外を歩いたけど日差しは強く、寝起きで水も飲んでいないので10分も歩けばくたくたになった。
一度水を飲んでまた探そうと思い、家に帰る。
すると母親は静かにケージを水で洗っていた。なぜ洗うのか聞くと、もうインコは帰ってこないだろうから次のインコを買いに行こうと言っていた。でも本当にそう思っているとは信じたくなかった。
「インコを探しています」
時々こういう張り紙を電柱で見かけて「ああ、どうせ見つからないんだろうな」と思っていたが、まさか自分がこんなことをするとは。
でも鳥の場合、電柱に貼るのは本当に効果が薄いと思った。鳥の場合は数百メートルから数キロ移動する生き物。なのでインターネットの掲示板に貼った。
人の都合で連れてこられて、突然変異によって空のような色と模様にされ、増やした鳥にどうしてここまで執着するのかな、自分は。
とはいえこの鳥のために他の予定を全てキャンセルするわけにはいかない。バイトの予定があったので家を出た。
また、そのあと通りがかった交番の人にも相談した。
「何をなくされましたか」
「インコ。空色のセキセイインコです。」
「どこで逃げましたか」
「自宅の住所から南の方角へ」
「遺失届を作成しますね。」
そう言って、動き続ける、何処に在るか分からない遺失物であるにも関わらず、パソコンに情報を打ち込んでくれた。ただ、警察側からは捜さないし、誰かが見つけてくれることを祈るしかないとも言われた。
その日はもうあまり考えないようにした。もうどうせ見つからないだろうという母親に憤りを感じつつも本当のことを言われた感じがする。掲示板にはたくさんのペットの写真、1 年、2 年もの間探し続けている人の投稿などがあり、大事なものを突然失った悲しみを感じた。
また、1日見つからなかったので、もう厳しいかなとも思った。人ですら熱中症になって死んでしまうこの7月の終わりの東京で、あの小さなふわふわの体が耐えられると思えなかったし、生まれてから人の手で育てられて、何が危険かもわからず、外に出た瞬間にパニックになり飛んでいく鳥が生きていけると思えなかった。
電話
7 月 30 日の朝、起きてぼんやりしていると電話が携帯にかかってくる。「警視庁」と書いてあり、なんか悪いことしたかな、と一瞬思ったが、昨日の遺失届を思い出す。そこまで早く見つかるわけないと思いつつも、逆にまだ逃げ出して 1 日だから生きていて、見つかったのかもと思って電話を取る。
それは近くの警察署からの電話で、近くで遺失届と一致するインコが見つかったから見に来てくれと言う内容だった。嬉しかった。急いでインコが入る大きさの虫かごを持ち自転車に乗り、警察署に向かう。
警察署に入ると、鳥の鳴き声が聞こえる。一度表に出てきた警察の方から特徴を教えてくださいと言われ、写真を見せると、待っててくださいと言い、奥の部屋に向かっていった。
すると、見た目が同じなので見に来てくださいと言われ、連れられた。
グワッ
目の前にいたのは、空色のインコ。用意してもらったケージの中からこっちを見ている。ぴーちゃんだ、そう言って近くに駆け寄る。
ただ、一目で何かが変わっていたような気がした。鼻が青いし、目が点になっている。以前自分が見たぴーちゃんは、鼻がピンク色で、目が真っ黒だった。若鳥ではなく、大人か、あるいは少し老けているように見えた。
「違いますか」と聞かれ、分からないという。違う気もしたが、信じたくなかった。何かの拍子で色が変わったのかなとも思い、体をよく見てみる。画像と見比べる。
すると、色々違うところが見えてくる。間違い探しみたいに。体の模様は違うし、生え換わりの毛は無い。
しまいには、「グワーッwww」と鳴いた。うちのぴーちゃんはもっと「ピョロッ」みたいな鳴き声だったす、この声で明らかに違うと分かった。もう笑ってしまった。インコからこんな声出るの??
警察の方と違うと伝えると、もう一度確認してという。どうやらすでに遺失届を出した人で一番近いのが自分らしい。周りを見ても他に探しに来ている人は居ないし、もしかして自分が唯一探しに来た人なのかもしれない。
今日も外出する用事があるので結局諦めて家を出る。
新しい子、お迎えする?
本当の飼い主がまだ遺失届を出していないし、家の近くの警察署に既にこんなににている見た目の鳥がいるということはそれほど迷い鳥が多いということだろうと思ったので、本当の飼い主が見つかることを祈りつつも、自分の心はますます曇った。
家に帰ると母親が「新しい子お迎えする?」と言った。あんたが逃がしたんでしょうがという気持ちもあったが、内心寂しかったからそう言ったんじゃないかなとも思った。
一通のメール
7 月 31 日の朝は静かだった。昨日もだったけど、ああ、インコいないのかと。
そう思って家を出て、電車の中でスマホを眺めているとメールが届いていた。掲示板に投稿がありました。と書いてあった。
内容は、近くで特徴のよくにたインコを保護しています。電話番号という内容だった。ただ、昨日の警察の件もあったから、大して驚かなかった。インコ飼ってる人はたくさんいるし、違うかもしれないと。
とはいえ確認しないとわからないので、家にいた母親に連絡して、 直接その人に会って確認を取ってもらうことにした。
見つかったインコ
するとなんと数時間後に、そのインコがうちのぴーちゃんだったという返事が来た。驚いた。本当なのか信じがたかったし、母親が間違えて違うインコを連れてきたのではないかとひやひやしたが、写真が送られてくると、確かにぴーちゃんだった。でも、やせてるような、汚れてるような気もした。
話によると、近くのマンションの住人の方に保護されたとのこと。近くと打っても 500 メートルくらい離れていたのでかなり飛んでいたはず。
家に帰るなり、ケージの中にすぐに入って、餌をガツガツ食べ出したらしく、相当お腹が減っていたらしい。ただ、何も飲まず食わずで1日間過ごすだけでも厳しいと聞いたことがあるので、水たまりとか、葉っぱを飲んだり食べたりして過ごしていたのだろう。
保護した人によると、ごみ捨て場に行った時に階段の手すりに止まっていて、肩に乗ってきて離れなかったそうだ。どうしてゴミ捨て場にたどり着いたのかは分からないけど、人を嫌ってはいなかったので、命拾いしたのかもしれない。
おかえり
インコが見つかったという話を聞いたあと急いで家に帰ると、確かにぴーちゃんがいた。みんなインコって同じ見た目かと思ったけど、飼っていると見分けがつくものなのかと驚いた。ケージの隅でじっとして、いつものように鳴きもせず、ただこっちを見ていた。
…ということで、奇跡的に逃げ出したインコが見つかったという話でした。ちなみに具合が悪そうだった事については、帰ってきてから数週間後には、だいぶ元気になり、すっかり元通りになりました。
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