Maker Faire Tokyo 2026に出展する話
初めて作ったハードウェアをなんとなく出したら出展することになった!?
Maker Faire Tokyoに出展するまでの話を随時更新しています。めっちゃ書きかけなので、当日までに完成させます
出展の告知と概要
出展の詳細が公開されました!みんな見に来てね!
| 📛 出店名称 | そうまめの部屋(Soumame’s room) |
| 📍 場所 | B-07-08 |
| 🛒 出展物 | ワイヤレス給電で書き換え可能な電子ペーパー名刺(Wirelessly-rewritable E-paper name badge (card style)) |
| 販売情報 | 1日目、2日目に分けて、電子ペーパー名刺(すぐに使用可能)とソフトウェア(Androidアプリ限定。 |
プロフィール
慶応義塾大学環境情報学部1年の得丸ことそうまめです! ずっとソフトウェア開発をしていましたが、最近ハードウェアに興味を持と始めて色々勉強しています!
- Web: https://tokumaru.work
- X: @so_toku
展示詳細
目玉:電子ペーパー名刺販売
ワイヤレス給電で動作し、好きな時にスマホで内容を書き換えることができる電子ペーパー名刺を紹介&数量限定 (30台を予定) で販売します!
これ、マジで原価が高くって、結構苦労しています。現時点で動作検証などを行っていますが、もし動かなかったら、販売を断念する可能性があります。
NFCで遊んでみる展示
せっかくなので、今年の春あたりにいろいろ触って面白いと思ったNFCでできることなどを展示しようと思います。
AIと基盤実装した話の紹介
あと、先述のNFC基盤は、自分がAIと実装して作ったものになるので、そこの話もできたら良いかなと思っています。普段ソフトウェアを書くのにはAIはもはや当たり前ですが、ハードウェア設計などにおいても、AIを利用することがますます容易になってきていて、今回作った作品も、誰でも作れるようになってきていると感じています。
日記
このプロジェクトを始めた経緯とかを全てここに書き残す。
2025年8月11日: 基盤1枚で動くハードウェアかっこいいなあ
DEFCON楽しかったぞ〜ってことで日本に帰ります。
— そうまめ (@So_to9) August 11, 2025
(これは @SecureAerospace で買ったads-b/ATC(航空機の位置情報や、無線)を受信するやつを、使おうとしている様子) pic.twitter.com/6MNufnrjJ1
普通にハードウェア作ったことないし、こういうのをできる人は天界に住んでいる人たちで、自分にはできないと思っていた。
DEF CONにはBadgeLifeという文化があって、なんかみんなイベント内でバッジをジャラジャラつけて見せびらかしている。基盤とかがベースになっていて、何らかの機能を有するバッジが多くて、ピカピカ光っているような、いわゆるLEDが点滅するタイプだったり、普通に高度な計算などができるもの(なんなら画面がついていて、Linuxが載っているとか)もある。
Maker Faireにはここまでの熱気はないが、とはいえそういう人は少数ながらいる。 また、日本は名刺文化が強い国で、だいたいビジネスマンだとどこでも名刺を持ち歩いている。エンジニアだって同じだ。
なので、今回はバッジサイズのでっかいやつじゃなくて、あえて小さい名刺サイズに抑えて、日常的に自分のかっこいい基盤を見せつけられるようなキットを作ろうと考えた。
2月: Diver-X(現Melt Interface Technologies)に入社
ソフトウェアエンジニアとして入社し、Melt MouseというHIDデバイスのソフトウェア周りを中心に関わることになった。
今まで自分はソフトウェア畑でハードウェアの人たちと接する機会は少なかったから、すごく新鮮。めちゃめちゃ凄腕のハードウェアエンジニアがいて、学生とかでバイトで一緒にいる人たちも、CAD,回路図を使いこなしていて、すごい。バケモノエンジニア集団みたいな感じ。
ハードウェアを触ったことがないとはいえ、理解する必要性が出てきたということもあって、自分である程度お金をかけてでも学ぶ必要があるし、知識を得やすい環境下に身を置けているので、今がそのチャンスだ!と思った。
4月1日: AIと設計した名刺が動いた!?基盤作成の始まり
ただ、サボり癖のある自分は、「面倒な作業を全部AIに投げられねーかな」と思ってしまった。このサボり癖はなかなか治っていなくって、ソフトウェアを作るようになったときのきっかけも、自分のサボり癖だったところがある。
普通に学ぶのもいいけど、AIに基盤設計させながら自分も少しずつ理解していけば良いのでは?と思い、Geminiに、Kicadという設計アプリの画面を見せながら、自分で1枚の回路基板を仕上げた。
先述の通り、基盤で作るバッジや、名刺のような、自分をアピールするアイテムを作るというのに興味があったので、名刺基板を作ることにした。そして、その名刺基板にディスプレイをつけようという話になった。
さらに、そのディスプレイをe-paperにすれば、電池切れの心配もいらないし、内容を好きなときに書き換えられるということも思いついた。
これはそれをGeminiに伝えて、教えてもらった時のやつ。途中からなぜかやたら褒めてくるようになった。褒めて伸ばすという教育者的な心の持ち主なのだろうか。
LLMに指示を仰いだらなんか最強の名刺ができたかもしれない?(AI基板設計)
— そうまめ (@So_to9) April 1, 2026
果たして動くのか... pic.twitter.com/WDZVj5H4B9
結果、とりあえず書き換えができる、MVP…(にも満たない気がするが)が完成した。
もちろん完璧に動くわけではなく、NFCでデータを書き込んだら、e-paperが更新された!っていうレベルのもの。
4月18日: ドローン名刺!?カッコよすぎる
このfumiさんって慶応SFCのfumiさんだよね…!?ってあとから気づいた。同じ学内にこんな人がいるとは…すごい。
基盤名刺に対するモチベが上昇
4月22日: とりあえず申し込んでみた。
作りかけの名刺を出してOKが出るものなのか怪しかったけど、目標を作って、それに向けて頑張るというのが良さそうな気がしたので、とりあえず応募
5月28日: マジで!?
なんと通ってしまった。やる気が5倍くらいになった一方で、大学忙しすぎて全然作業できない…
5月31日: 迷走し始める
これはV3で、V2までの直したい点を盛り込んだもので、今の原型に最も近いものになる。
NFCから電気をためてe-paper(画面)を書き換えるというNFCで発生させた電力で回路を駆動し、E-ink(電子ペーパー)の表示を非接触で更新する仕組みです。バッテリーレスで動作するため、薄型化が可能になり、名刺などのデバイスには最適な構成です。NFCで発生させた電力で回路を駆動し、E-ink(電子ペーパー)の表示を非接触で更新する仕組みです。バッテリーレスで動作するため薄型化が可能になり、名刺などのデバイスには最適な構成です。
実際に作ってみたところ、正常に画面を書き換えることはできたものの、AIと相談しながら進めていても電力容量が不足する問題が発生しました。
そのため回路設計の見直しを余儀なくされ、そもそもNFC受電における電力容量やエネルギー蓄積がどのような仕組みになっているのかを一から調べることになり、かなり試行錯誤しました。
8月16日: V4発注
これで動かなかったらかなりまずいのだけれど、とりあえず発注。前回よりコンデンサの数を大幅に増やし、フットプリントなどを再選定することになった。 ここでもAIを活用し、LCSC(JLCPCB)の在庫リストを元に、いい感じのフットプリンを自動的に選定&そのフットプリントに基づいて自動的にシミュレーションなどを行った。
いくらシミュレーションしても動かないのがハードウェア…というところもあるので、確実に動くかどうかはわからないが、以前より信頼性は上がったはず。
また、これを作るに際して、ezsignの電子ペーパーカードをバラバラに分解して、どういう仕組みなのかなどを調べたりもした。
ezsignの既存製品。
これにメモリ領域があればURLとかを仕込んで、スキャンできるので完璧だったんだけどなあ…と思った。
これ、結構すごくって、普通にアプリストアにあるアプリを使って書き込むことができる。
20秒くらいかざすとこんな感じで書き換わる。
バラバラにして、アンテナの形状、どれくらいの蓄電容量があるのかなどを確認した。
蓄電という言葉が自分は当初よくわかっていなかったんだけど、これを通して少し学んだ気がする。
自分が設計したものよりも全然効率が良いということもわかった。専用のチップなどを載せていたり、電気を貯めるのではなく、連続的に受け取った電気で交信をかけていくという方法をとっていたりする。すっげえ。
8月19日 ついに動いた
そして、届いた基板にファームウェアを書き込んで、かざすと無事に動いた。嬉しいよ言うより、安心したというべきなのかもしれない。これが動かなかったらMaker Faireで動作品を販売するのはかなり厳しかったと思う。
8月23日 アプリ開発
動くことがわかったのでアプリを作ることにした。アプリを作るのは以前からやったことがあったが、ウェブアプリだったのでNFCのところは今までやったことがなく、挑戦する必要があった。
ただ、AIにコーディングをさせることで、ある程度なんとかなった。最近のAIは本当に人間がいらないんじゃないかと思うレベルで、自分はフレームワークにどういうものがあるかを知っていたので、「こういう方法で作って」と指示を出して作ってもらうようにした。
ただ1つ問題があって、iOSの場合はApple Developer Programに入って99ドル払わないと、開発用途であってもNFCを使うことができないという意味の分からない制限があった。そのためApple向けは途中で断念することになり、販売するアプリはAndroidのみの提供になりそうだ。
開発にあたって、難しいところはそこまで多くありませんでした。ただ体験として重要だったところがいくつかあった。NFC名刺基盤の書き換えをいかに簡単にするかと、画質などのバランス調整は結構大事そう。
画質を良くしようとすると、1分くらいずっとNFCをかざし続けなければいけません。速い設定でも15秒ほどかかります。市販品も15秒程度かかるので、そこは許容範囲かなと思った。
ただ、書き込み中は安定して15秒ほどかざし続けてもらう必要があるため、ソフトウェア側でエラー処理などをかなり調整する必要があった。まあでもいろいろいじったらその甲斐あって安定して対応できるようになり、販売の目処が立ったので安心。
8月25日: のぼり
Maker Faireの展示スペースは無課金だと結構貧相な見た目になってしまうというのを例年観測していた。テーブルとか椅子ですら課金しないと支給されないので、どうやったら比較的低コストでスペースを飾ることができるかを考えた。
結果、チラシなどを印刷するよりも、クソでかいのぼりを1つ作って、それをおく方が目立つということがわかった。そして、それ以外のテーブルとかは自分で持参する方が割安(車があるので)だということがわかった。
で、今日その注文したのぼりが届いたけど…wwwwww
でかい。デカすぎる。
一応防火対策済み、規定サイズギリギリというところで今回のイベント仕様にしているんだけど…w
イラレはすでにライセンス切れ(Adobe税たかすぎ)なので、パワポで作ったんだけど、めっちゃこういう虹色の文字作れるんだよね。通りでパワポスライドはダサい傾向が高いのか
先に言っておくけど、自分はこういうデザインを製品に取り入れるのは好きではないからね。あくまでも目立つことを優先した結果がこれだっただけで。別に好んでこれを採用しているわけではないからね。
8月26日: 製品版V1の発注
目処が立ったとはいえ、一部改善点が見えてきたのも事実。ネジ穴とかもないにで3Dプリンターとかでカバーを作って取り付けるとかもできないし、首から下げることもできない。
形状変更などを検討した結果、4箇所のネジ穴、首から下げるためのストラップ穴、商品を購入したユーザーが自分でプログラムを書き込むことができるようにするための追加のGPIOピンなどを追加。
これも全てAIがやってくれたのは本当にすごい。ちなみに色は黒色にしました。
フットプリント変更を迫られる
しかし、注文してみようとしたらエラーが。なんと前回の成功した試作基盤に使っているパーツ(ST25とSTM32)がないと言われた。Maker Faire10日前でこれはだいぶまずい。
JLCPCBで部品の実装を頼んでいる以上、補充を待つか、代わりの部品を探すしかない。代わりの部品で少し性能は低下する(メモリ容量)が、十分に動作する仕様のものがあったので、それを再度選定し、注文した。
結果として、注文が遅れてしまい、MFT当日に間に合うか…?という状況になってしまった。
8月28日: 税関書類
中には五千五百円払えと書いてある。詐欺かな?と思ってみると、普通にこの前頼んだ電子ペーパーの請求が。
以前電子ペーパーを頼んだ時、china postで1ヶ月は余裕でかかっていたから、Fedexにしたんだけど、五千円も取られるのか…
普通に現時点で15万以上溶かしていて、かなり金銭的に厳しい。ここまでコストかかるとMaker Faireで仮に30枚全てを五千円で売ったとしても、元はペイできない可能性が高いんだよなあ。
とはいえ学習にかかるコストをすべて除けば、学びにかかったコストは割と大きくはないのかもしれない。大丈夫。15万円なんて将来一瞬でペイできるはずさ。 (と言いつつも、現時点の全財産が30万円くらいなので内心泣きそうになっている)
AIに全てやらせると言いつつも、AIが話す言葉をある程度は理解し(そして、理解するように努め)、わからないところはクリアにしていき、指示を下す必要はまだある。
回路図の作り方から勉強したわけじゃないけど、こうやって作りたいハードウェアを決めて、ソフトウェア含めて自分(ほぼAIかもだけど)で全て作って、みんなが使えるような形にして、それを世に出して…という一連のプロセスを自分の手の中に収めることができる。そしてそれがたったの15万円で…と考えるとクソ安いのかもしれない。
8月29日: 間に合うか心配すぎる
前回は4日で自宅に届いたので、余裕だろと思っていたが、どうやら注文した部品と色などが原因で、通常より時間を要するらしい。といっても…流石に1週間で届くよね…?
そう思いながらJLCPCBの注文履歴画面を2時間に1回くらいチェックしているけど、“manufacturing data finished”から進まない。これ、もしかして今日が土曜日だから、生産開始されるのは月曜日…? 最悪の場合、MFTが終わってから基盤が届く可能性が出てきた。これはまずいぞ。
…と言ってもできることは特にないんだけどね。急かしたところで早くはならない気がする。
8月30日: 締切ギリギリは良くない
結局急かした
昨日「急かしたところではやくはならない気がする」とか言って寝たけど、やっぱり急かしてみようということで急かしてみた
多分意味はない気がするけど、多分人間?っぽい(あるいはLLM)回答が返ってきて、
予定時間が表示されるようになった。
しかしPCB実装は9月2日らしい。9月4日頃までに受け取っておく必要がある(前日なので)から、結構厳しいなあ…(現実を直視して焦りが倍増した)
のぼり
あと、最悪なことに、この間買ったのぼりに防炎対策をつけていなかった(つけたつもりだったけど、多分設定が消えてしまっていた。確認ミス)ため、再度発注する羽目になった。普通にチラシでいいかな〜と思ったけど、比べたら案外のぼりの方が割安な気がしてきたので、再度注文した。家にクソデカいのぼり(防炎なし)がすでにあるから、家族にこれ以上ガラクタを増やすなと言われた。防火なしのやつ、どうしようかな…
9月5日: Day 1終了!
バタバタしていて全然続きを書けていませんでした。基本的に4日まではロジ周りのことをやっていたり、前日まで、届いた名刺基板の製作なんかをやっていました。(つまり、無事届いて組み立てもできたということになります。
#MFTokyo2026 1日目終了!ということで、たくさんのかたに見てもらえました!ここに書ききれないくらいいろいろ話したい!
— そうまめ #MFTokyo2026 B-07-08 (@So_to9) September 5, 2026
ソフトウェアの人でもいい感じにAIを使ってこういったプロダクトに落とせる時代になってきた...というか、今朝できるようになりましたね。
人間の仕事は、こうしたところで自b pic.twitter.com/eO8R892Y0I
って書いたんだけどXの文字数制限やばすぎて全然感想書けないからここに書きます。
1日目終了!ということで、たくさんのかたに見てもらえました!ここに書ききれないくらいいろいろ話したい! ソフトウェアの人でもいい感じにAIを使ってこういったプロダクトに落とせる時代になってきた…というか、今朝できるようになりましたね。 (GPT-6 Astra)
人間の仕事は、こうしたところで、自分の作ったものを見せて、手に取ってもらって、コミュニケーションを取っていくことなのかなーと勝手に思っています。ハードウェアってソフトウェア以上にこういうことがやりやすいから、めちゃめちゃ楽しい経験だし、AIが生み出すものを理解し、手綱を握ることができるよう手綱を握ることができるようになりたいなと思いました。
ちなみに、販売に関してはそこそこ売れました。ぶっちゃけ全く売れないか、知り合い数名が買うといった感じなのかなと思っていたのですが、様々なかたに購入していただきました。
そうまめさんのNFC名刺を購入 pic.twitter.com/IP3tSUtVqk
— シルマ (@s1ruma) September 5, 2026
NFCの電磁誘導のわずかな電力だけで電子ペーパーを書き換えられるらしい、そんなちょろっとで書き換えられるんだ!#MFT2026 pic.twitter.com/ajolNviS5F
— ぽん (@ammucha) September 5, 2026
こうしてネットに上げていただいているかたも!超嬉しい。
あと、こういったハードウェアを売ることは初めてということもあって、めちゃめちゃヒヤヒヤしています。もしハードウェアやファームウェアがが壊れていたら…って。何度も検証はしていますが、ソフトウェアみたいに「置き換えればいいや」では済まないわけで。
自分は Melt Interface Technologiesというところ(Maker Faireのスポンサーでもあります)でアルバイトしているわけですが、ソフトウェアエンジニアからは絶対に見ることができないような視点が見えてきます。壊れていたら、直せばいいわけですが、一度売ったものを簡単に置き換えることはできませんし、取り戻すにしても、多大なコストを要します。
こんな世界でみんなものを売ってるのか!?と思った一方で、形になったものを売って使ってもらえるっていうのはめちゃめちゃ嬉しいよなあと思ったりしています。
ぶっちゃけ1枚あたりの販売価格が5000円で、自分としてはめちゃめちゃ高いと思っています。もちろんこういうところで売っているものなので、法的な保証はついていないのですが、それでも自分が売ったもので、自分の名前として出しているわけで、壊れていたら困るし、さすがに5000円出した人も騙されたような気持ちになるかもしれません。責任重大。
ただ、開発研究費なども含めてこの値段に設定していて、多分これでも赤字になるというのが痛いところ… Maker Faireでは、製作済み分を全て販売しようと思っています。
しかし、人との出会いや経験という風に考えてば、めちゃめちゃ黒字なのかもしれない。明日も頑張っていこうと思います。
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